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【レポート】50の悩みからひも解くデザイナー成長のための10のヒント

株式会社ベイジのアートディレクター・デザイナー荒砂智之さんのセミナーレポートをお届けします。
前半の「経営者・フリーランスの部」に引き続き、本編は2部構成の後半「デザイナーの部」となります。

  • セミナー名:50の悩みからひも解くデザイナー成長のための10のヒント
  • 講師:荒砂 智之さん(株式会社ベイジ アートディレクター・デザイナー)
  • 開催日:2019年9月18日
  • 会場:リファレンス駅東(福岡市博多区)
  • 主催:株式会社リクト

デザイン系の情報発信されている方で、会ってみたいわ〜と思っていた方です!福岡は初上陸とのこと、貴重な機会をありがとうございます^ ^

なお、本レポートでは「50の悩み」を抜粋して、10の悩みカテゴリーにまとめております。

はじめに

自己紹介に続きまして、なぜこのテーマを選んだのか?というお話しでした。
ベイジで様々なプロジェクトに携わっていて過去にロゴデザインの受賞歴もある方ですが、「毎日たくさん失敗するし、めちゃくちゃ悩むし、壁にぶつかる」 とのこと。
荒砂さんの16年のデザイナー経験の中から出てきた50の悩みと、悩みから脱出するための10のヒントを教えていただきました!

01. デザイナー個人の悩み:時間

時間の使い方の、

  • 事前情報をじっくり理解したいけど、時間がない
  • 届いた原稿を読む時間が無くそのまま流し込んでいる
  • 考えても答えが見つからず時間だけが経って焦る

というような悩みについてのヒント:
情報収集・理解・整理にこそ時間を使え!

荒砂さんいわく、対象を理解せずに作ろうとするから焦る・悩む・迷う のだそう。

  • 時間が無い人の感覚= 知る 30% : 考える・作る 70%
  • 仕事が早い人の感覚= 知る・考える 70% : 作る 30%

特に駆け出しデザイナーさんやデザインを学んでいる方は、闇雲にPsやAi、XDを開いてすぐ作業に着手しようとする傾向にあるようです。
対象を知るための情報収集/分析、デザイン着手前の作戦/プランニング には十分に時間を割くべきですね。

実はこれに似たようなこと、私も若い時に前職で上司に言われたことがあります。
「デザインのイメージを掴むまではPs/Aiを開くな」と言われまして…今でも肝に命じています。

ただし、自身を振り返って見ると 「知る」 に関してはまだまだ足りないような気がして反省です…。

02. デザイナー個人の悩み:クオリティ

クオリティに対して、

  • デキの良い時・デキの悪い時があり、品質が安定しない
  • デキるデザイナーと比べてどこか垢抜けない
  • これ以上どうやってクオリティを上げるのか分からない

というような悩みについてのヒント:
感覚任せのデザインで、自分で自分のクオリティを意識的にコントロールできていない

そして、まずはデザインの基本原則で装備を固めよ とのことです。

デザインの基本原則は「なんとなく」でもできる。その「なんとなく」が「意識的」になるとレベルが上がる!
ここでは「なんとなくデザイン」と「意識的デザイン」をバナーを作例に分かりやすく説明いただきました。

本章の内容は、現在携わっているデザイン系トレーナー業務でも活かせる内容でしたので、もう一度基本原則を見直そうと思います!

また少し前に読んだネット記事で「型破りになるにはまず型を身に着けなければいけない」という内容の記事がありまして、これにも通じるのかなぁと個人的に思いました。(調べたところ18代目中村勘三郎さんの言葉でした)

03. デザイナー個人の悩み:表現力

表現力について、

  • 不得意な分野のデザインがどうしてもうまく作れない
  • いつも同じパターンの表現で実績が似てしまう
  • 仕事内容がいつも変わらないので表現の幅が増えない

というような悩みについてのヒント:
常にセンスを磨き続ける活動を怠るな

「不得意分野はその領域のモノを見る数が足りていない」とのこと。うん。確かに…自分の場合は「可愛いデザイン」。あまり見てないし苦手なんですよね^ ^;

また、デザインをたくさん見て「良い・悪い」を自身で判断(ジャッジ)するのもセンスを磨くためには必要なようです。

なお、荒砂さんもこの悩みを克服するために以下のことを実行したそうです。ポイントは「ちょっと実行が難しい目標を立てる」と良いとのこと。

克服方法(例:荒砂さんの場合)
  • 毎日デザインの参考サイトを見て記録する
  • 毎週土曜日に勉強の時間を2時間作り、10個模写する

そして、模写をある程度継続したら更に「何を学ぶのか?」と、学習を掘り下げたとのこと。
(詳しくは荒砂さんのnoteで取り上げられています。)

自身のデザインマンネリ化を防ぐためにも、トレーナー業務で人を指導するためにも、意識して学習時間を設けてもっとジャッジしよう!

04. デザイナー個人の悩み:説明

デザインを説明する時、

  • 「なぜこうしたの?」と聞かれた時にうまく説明できない
  • デザインを作っている最中に思っていたことが、説明する時になぜか頭に浮かばない
  • 人に意図を説明しても腑に落ちない顔をされてしまう

というような悩みについてのヒント:
言語化能力と論理的思考力を鍛えよ

「説明の言葉が出てこない」というのは「自分の思考が情報になっていない」という状態とのこと。
そもそも、なぜ言語化が必要なのか?それは「解決したい課題に対して有効かどうかを関係者も理解したいから」

ここで作例が提示されて、

  • 論理的かどうかを確認するコツ「言葉を逆転させて確認」
  • 端的に伝えることについて

が説明されました。(なるほど!)

「無理やりな理論に当てはめず、相手にとって分かりやすいシンプルな言葉で説明すること」という結論でした。

私自身もデザインの説明文を考える機会が多いのですが、「端的に」という部分が足りずに長文になってしまいます…

05. 対人関係の悩み:教育(1)

教育の面について、

  • 後輩からの「なぜですか?」に答えられない
  • 自分が考えたこともなかった質問をされて困った

というような悩みについてのヒント:
アカデミックな専門知識を強化せよ

加えて、自分の経験だけにあぐらをかかず専門知識を広く学ぶこと携わった作業の「一般的には」が語れるようになると良いという補足もいただきました。

また、専門知識を掘り下げて【知る】には、ネット上の情報では無いアカデミックな知識が好ましいとのこと。
再度【知る】というキーワードが私の中で浮かび上がってきました…。自分の課題テーマは【知る】だな!

06. 対人関係の悩み:教育(2)

教育の面について、

  • 「この指摘別の人にもしたなぁ…」と思いながら同じだけの手間と時間をかけて説明している
  • 新人からの「ちょっといいですか?」が減らない
  • 結局自分の作業の手が止まって帰宅時間が遅くなる

というような悩みについてのヒント:
ノウハウ・ナレッジはとことん蓄積せよ

「後輩からの質問をナレッジ化のヒントと考え、再利用可能な教材としてまとめること」というアドバイスをいただきました。

07. 対人関係の悩み:マネジメント

マネジメントについて、

  • 今までこの伝え方で問題なかったのに、この人に限って問題が多々発生する
  • 10伝えると必ず1つか2つ抜け漏れがある
  • どうしてもこの人とは相性が合わない…(気がする)

というような悩みについてのヒント:
相手を知ってコミュニケーションせよ

「相手に合わせてもらうのではなく、自分が合わせる」「特性によって内容、伝え方、量、タイミングを変える」というアドバイスもいただきました。

また、「一辺倒で機械的な指示をやめ、個々人の気持ちに寄り添いながら、一緒に解決するスタンスをとること」 とのこと。自分自身、機械的になりがちなので注意しよう…

08. 対人関係の悩み:顧客折衝

顧客とのやりとりで、

  • 指示通りに直したのにまた修正がきて終わらない
  • 理由は分からないが「とにかくダサい」と言われ、明確な対応策が決められない
  • 「氷のように冷たく、時に炎のように燃えるイメージで」とやたら情緒的なフィードバックが来てどのように返せばよいのか分からない

というような悩みについてのヒント:
仕事のゴール地点は自分自身で決めろ

荒砂さんいわく、上記のような悩みが出てくる背景として、「他者(クライアント)の要望を満たすことがゴールになっていて、自分自身が振り回されている状態」 とのこと。うん、確かにあるあるです。

そこで、

  • 顧客の要望は必ずしも正解ではない
  • 顧客の言葉を追って形にするとイニシアティブを失う
  • プロのデザイナーとして「こうすべきです」と言う

というアドバイスもいただきました。

ここでは荒砂さんの実体験のお話しで、クライアントの言う通りに修正したら「言ったまんま…舐めてんのか!」と言われたそうです…。

デザイナーの仕事は「顧客が思い描くイメージ・理想を上回る形で具体化すること」「自分の方からさらに正しいゴールを示して導くこと」が大切だ、とのことでした。

クライアントをゴールへ導くためには、プロとして断言することも大事だし、論理的に説明する能力が必要ですね!

でも…「指示が細かい」「上から目線」「実績になるから/次に繋がるから」ということを言う依頼者は避けて! とのことです。「上から目線」の依頼者…割といますよね(汗

自分の場合ですが、「指示が細かい」依頼者に対しては、自身を【オペレーター】【デザイン製造マシーン】に変身させてやり過ごしているのが現実です…。(そんなに回数や頻度は多くないですが。)

09. 企業の悩み:所属企業(職場)

所属している会社で、

  • 仕事が終わっても「帰りづらい」と感じる
  • 退職者が増え「次は誰が…」という雰囲気がある
  • 感情的に怒る人、話が通じない人、話を聞かない人 が居るなど、人間関係で疲れてしまう
  • 社外と交流する文化がなく、新しい刺激が少ない

というような悩みについてのヒント:
在籍のメリット・デメリットを比較せよ

また、比較するときには、
収入/興味/成長/働きやすさ/人間関係/安定性
を軸に言語化して比較することをオススメされていました。

ここで、「危険なのは、転職するデメリットが多いのに、転職せざるを得なくなるような状態」とのことで、荒砂さんの実体験からくるお話しでした。

実は本章でのお悩み…制作会社勤務時代の自分にかなり当てはまっていました!(4年ほど前のお話し)
1年計画で、フリーランスになるための地固めやっていたことが懐かしいです…。

「在籍するメリット・デメリットは常に把握しながら、いざという時路頭に迷わない力を身につけること」 との結論でした。

これは会社に属していないフリーランスも常に考えて準備するべきことだと思います。
それにしても、代表が横にいるのにこのお話しができていることにびっくりで、きっと懐が広くて深い会社なんだろうなぁ〜と感心しました。

10. 市場の悩み:キャリア

デザイナー市場で、

  • 社内の仕事はデキるが他で通用するのか実は不安
  • 転職してきた人が明らかにレベルが高くて焦った
  • もう最前線で勝負したくない

というような悩みについてのヒント:
評価基準は社内でなく市場に置け

また、ビジネス用語「VUCA」に触れながら、「時代・市場の変化に対応し、自分で自分を変え続ける人こそが市場価値の高い人」とおっしゃっており、「1年前と同じ仕事の仕方をしていたら「やばい」と思うこと」 と、ドキッとする言葉で締め括られました。

第1部・第2部 全体を通しての所感

第1部では、特に「自分に足りていないところ」を痛烈に刺激される内容でした。また、価格や顧客についてのリアルなお話しがとても参考になりました。

第2部では、「そうそう!あるある」という内容から「私大丈夫かな…どうだろう?」と自問するような内容でした。書籍の紹介もあって、2冊ほど気になる本は早速購入して読んでいます^ ^

「参加して本当に良かった」と思うのと同時に「言ってる・思ってるだけじゃなく地道に真面目に実行していかないとダメだな…」と自戒の念も出てくるセミナーでした。

自身の強みを作り出して、自分の言葉で発信できるようなデザイナーでありたいです。まずは自分の殻を破らないといけませんね。

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